三橋たつお公式ブログ

岐阜市をやさしくあたたかく

「メディアコスモス」3棟分の費用が毎年不足? 老朽化する岐阜市の公共建築物とインフラ

老朽インフラへの対策費、総額1兆3402億円が今後30年間で必要との試算も

 昨年9月11日、岐阜市の明徳小学校北側の道路が突然陥没しました。関連ニュースなどを見る限りでは、詳しい原因などはいまだ調査中のようです。 

 この件とは直接関係がないものの、岐阜市では、道路や地中に埋設された水道管をはじめ、公民館や橋の多くで「老朽化」が進んでいます。老朽化が進んだ施設や設備などは状況に応じた修繕や建替えなどが必要となってきます。

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 老朽化対策の費用はどれほどの額になるのでしょうか。

 岐阜市ではかつて、2015年度から30年間の間に必要となる市所有の「建築物」「上下水道」「道路、橋梁等」の修繕・建替え費用を試算。
 その総額を上に示した図のとおり約1兆2038億円と公表していました。1年あたりでは単純換算で401億円余りが必要となる計算です。

 ちなみに岐阜市の年間歳出額はここ数年、1500億円前後で推移しています(新市庁舎建設と消費税増税対策費などをおりこんだ今年度は1720億5000万円)。そうした岐阜市にとって400億円の出費は、決して小さな額ではありません。
 というか、到底足りないようで・・・
 市の当時の予測によれば、今後30年間に公共施設等に使える費用は約6730億円。
 修繕・建替えに1兆2038億円が必要であるとすれば30年間で約5308億円、1年あたりでは約177億円が不足するという事になります。

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 メディアコスモスの建築費用約60億円を例にとれば、毎年、メディアコスモス3棟分の建築費用が不足すると岐阜市の説明資料に記されています。

既存施設・設備等の長寿命化で費用を大幅に圧縮へ

 このような状況を受け、岐阜市は2017年3月、「岐阜市公共施設等総合管理計画」を策定しました。以下で示しす図の資料は、この計画の引用です

岐阜市公共施設等総合管理計画」はこちらから
     ↓ ↓ ↓
http://www.city.gifu.lg.jp/29342.htm

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 岐阜市公共施設等総合管理計画」では、「建築物」「上下水道」「道路、橋梁等」の修繕・建替え費用にその他の施設などを加え、上図のとおり、今後の30年間に必要な費用を約1兆3402億円と見込み、年額換算では447億円としています。

 総費用は冒頭の資料に比較して、実にあっさりと1364億円増加していますね。

 財源不足額は約7064億円、1年あたりでは235億円が不足する計算で、メディアコスモスがさらに約1棟分(計4棟分)、不足額があっさりと積み増されました。

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 この膨大な費用不足を解決する方策として、同計画では既存設備等の長寿命化(言い換えれば延命)を提言。
 これにより、財源不足額を30年間で2533億円、1年あたりでは84億円にまで減らす事ができるとしています。
 84億円を岐阜市の人口約40万人で割ると1人あたり2万円強。まだまだとてつもない金額ですが、「やるしかない」との思いがあれば、実現可能な数字のようにも思えます。

公共施設の老朽化対策、残された課題とは

 以上、岐阜市における公共施設等やインフラの老朽化対策についてをざっとご紹介してきましたが、これで問題が解決したとは決して言えません。

 以下に私見として、残された課題を列挙してみたいと思います。

①1年あたり84億円の不足財源をどう解決するか
 既存設備等の長寿命化主体で対策を行った場合で1年あたり84億円。
 長寿命化が難しく新たに作り直す必要のある施設も出るでしょうから、実際には不足額がさらに膨らむ可能性は大です。
 これに備えて経費節減など支出圧縮に一層努める他、財源不足を解消するためにどのような手法にせよ、結果的に市民に負担増を求めるケースもあるでしょう。

②施設の統廃合による支出の効率化をどう進めるか
 人口減少社会における市町村の消滅可能性と同様、岐阜市内においても地域別の将来人口の増減には大きな違いの出る事が市などの資料で予想されています。
 施設等の長寿命化によって既存施設すべてを維持するのではなく、統廃合に代表される効率化をどのように進めるのかは引き続き議論し、実行されるべきでしょう。

③必要に応じた建物の建替え、施設新設等をどう進めるか
 既存施設等の長寿命化を公共施策に据える場合、建替えや施設の新設等が消極的に捉えられる可能性も少なくありません。
 必要な物には適切に新設・建替えの予算を支出する姿勢が維持されるべきです。

④施設の長寿命化改修においてバリアフリーをいかに適切に進めるか
 施設の多くはバリアフリーがあまり進んでいないのが実情。新設された介護施設と町の古い公民館を見比べれば一目瞭然。誰でもその違いに驚くはずです。改修においてはバリアフリー化が特に配慮されるべきです。

⑤安心・安全な施設の担保
 KYBの免震装置データ改ざんのニュースを見るまでもなく、公共の建物だからといって企業が「いつも以上に万全を期した納品や工事をする」とは限りません。
 道路の舗装を行っている県外の友人が、「アスファルトを設計値よりも1センチ薄くするだけで、膨大な利益が出る。実際にはそのような事はしないが、常にその誘惑が頭をよぎる」と言っていました・・・
 道路施設の安心・安全には計画段階から十分以上に配慮し、完成後も計画通りの施工が成されたかを確認する事に費用を惜しむべきではありません。

もっと市民に説明されていくべき総額1兆円近くの予算の使い途

 以上、8000億円から場合によっては1兆円にも達する膨大な費用のかかるこの件。市任せですべてが決められていって良いはずはありません。
 市などは、さまざまな機会を使って今まで以上にこの件を広報し、市民への理解を得ていくべきです。